8月24日 西村屋 本館・フロント業務
8月23日、夕方。
「西村屋 本館」のフロントに立っていると、滞在中のご家族が来られた。親子3世代6人。幼児と小学低学年くらいの姉妹がいる。浴衣姿でタオルを持っているので、外湯に行くようだ。私は外湯用のバッグを準備する。
姉妹の手には、外湯めぐりのスタンプラリー帳。すでにスタンプを1つゲットしていた。
「スタンプが他にも集まったら、見せてね!」
そう言いながら私は、彼女たちにバッグを渡し、見送った。
今朝、その家族が大浴場へ来た。「おはようございます」とあいさつを交わす。姉妹もいて、私のことを覚えてくれたのか、ニコッと笑顔を見せてくれた。
今日は彼女たちがチェックアウトする日だ。
8月17日から「西村屋 本館」でフロント業務を担当している。今日で6日目だ。頑張って取り組んできた成果が出てきたのか、この生活にも慣れてきた。新しい業務が始まると、少し不安にはなる。それでも最近は「何をするのかな?」とワクワクできる余裕も出てきた。CEP初日と比べると、ずいぶん成長したなと思う。
業務をこなすこと5日間。少しずつだが業務にも慣れ、徐々に全体がわかってくる。
チェックアウトの11時が迫ると、一気にお客様が詰めかけてくる。あたふたする私は、お姉さんたちの指示に従い、荷物運びや履物の用意をする。最後に「ありがとうございました」とお見送り。瞬く間に時間が過ぎていく。
休憩を終え、13時からチェックイン業務。何時にいらっしゃるかわからないお客様が多いので、待っている間はお掃除だ。玄関やフロント回りなど、目につくところをきれいにする。
15時頃から、徐々にお客様の来館が増えてくる。「いらっしゃいませ」とお出迎えし、お荷物をもってフロントまでご案内。履物を取り間違えないよう、気をつけて片付けていると、続々と次のお客様が。もうてんてこ舞いだ。
気づけば終業時刻の17時半。あっという間に1日が終わる。
フロント業務は、まさに「旅館の玄関」だ。宿泊客全員と顔を合わせる。そのため、人数・世代・海外の方かどうか、車の有無など、部屋ごとにしっかり把握する必要がある。間違えると、預かった履物や荷物の取り違えが起きてしまうのだ。注意してお仕事をしなければいけない、難しい業務だ。
今日もチェックアウトの時間が刻々とせまる。フロントに立つ私は、慌ただしくお客様のお見送りなどをしていた。
姉妹とその家族がフロントにやって来た。
「あー、もうお帰りなんだな」
と考えていたその時、2人が私の方に駆け寄って来た。なんだろうと思っていると、それぞれスタンプ帳を差し出してくる。開くと、すべてのスタンプがそろっていた。
「覚えてくれてたんだ!」
本当にうれしくて、感動した。お客様に楽しんでもらうために働く立場なのに。
最後までお見送りをするため、玄関へ。彼女たちと話す。これから水族館「城崎マリンワールド」に行くとのこと。だが、そろそろ車に乗らないといけないのに、その気配がまったくない。さすがにまずいなと思い、「一緒に行こう!」と車に向かう。
乗った後もずっと手を振ってくれていた。私も見えなくなるまで、ずっと手を振った。うれしさよりも、寂しさの方が大きかった。
ありがとう。出会えてよかった。