8月4日 京都→城崎温泉
「ついにこの日が来た」
8月4日朝7時。目覚めは良くない。パッキングした荷物を見ていると、緊張で心臓がドキドキする音が聞こえてくる。しかし、前に進まなければ。JR京都駅に向かう支度をする。
前夜、私は最終の準備に追われていた。行き先は、兵庫県・城崎温泉。現地での業務をまとめていると、「私の力でこなせるんだろうか」と不安がよぎる。住み込みで働いた経験はもちろんない。いつもより2時間早い、22時に寝床に向かうが、頭の中がぐるぐるまわり、心拍数は上がったまま。続々とほかのメンバーから余裕のない文面のメールがくる。みんなも緊張しているんだな。
結局、午前0時半になった。いつもと同じ時間だ。なんとかなるだろう、と言い聞かせているうち、いつの間にか眠っていた。
9時20分。リュックサックを背負い、ショルダーバッグを肩にかけ、スーツケースを引きながら城崎行きの特急電車に乗り込んだ。車窓から眺める風景が、市街地から少しずつ、緑がまぶしい田園風景に移り行く。舞鶴のあたりだ。その様子が、私に城崎へ向かっていることを感じさせる。友達からの応援のメールが届く。「大丈夫!」と、かっこつけるつもりが、あまりにも優しい言葉に「不安やわ…」と、すぐ弱音を吐いてしまった。
気分転換のため音楽を聞く。お茶を飲み、ボーっとしてみた。少しは落ち着くが、長くは続かない。お昼なのに、食欲もない。
なぜ、そこまで緊張しているのか。それは初めての経験だからだ。1ヵ月間、仲間たちと働きながら調査する。自分がどこまで成長できるかという〝ワクワク感″も、強く感じている。毎日温泉につかれるしね。 落ち着くことを諦めた13時前、JR城崎温泉駅に到着した。
改札を出ると、知っている顔が目に飛び込んできた。待ち合わせていた友人だ。彼女の笑顔を見ると、穏やかな気持ちになった。
昼過ぎの駅前はとても暑く、観光客もまばらで静か。先生やほかの友人と連絡を取り合流。1年ぶりの城崎。新しいお店も増え、昨年とは違う景色もあるが、1300年続く温泉街の雰囲気は、全く変わらない。前回はインターンシップで1週間滞在したのだが、観光や温泉巡りなど、ほとんど遊んでいたので気楽なものだった。近くのカフェで一息ついた頃、次の電車で来たメンバーが合流。7人全員がそろう。気温は35℃を超え、青空から強い日差しが照っている。楽しそうに話したり、かいた汗を乾かしたりと、一見普段通りに見えるが、ほのかな緊張感が漂っていた。
15時、駅から車で約10分にある研習先「西村屋 ホテル招月庭」に到着。オリエンテーションが始まった。シフトを手に取ると、9月6日までの予定がぎっしり書いてある。初日は、160年の歴史がある「西村屋 本館」だと分かり、さらに実感が湧く。不安がぶり返し、体が緊張して、自己紹介では声が出なかった。「自分は本当に弱いな、周りに助けられていたんだな」と、友人や先生、家族に改めて感謝した。
この日は、8月5日からはじまるプログラムの説明で終了。その後メンバーと打ち合わせ。やっぱり、みんなだけの時間は心が安らぐ。シフトの関係上、息がつけるのは今日だけかもしれない。明日は、職場見学や館内ツアー、フロント研修などが始まる。自分なりにお役に立てるよう、努力したい。
初日は8時からスタートする。早起きするために、今日こそは早く寝よう。