世界遺産の価値低下について
みなさんこんにちは。遠藤櫻です。
今回は、私の「CEPファイナルプレゼンテーション」について書きたいと思います。
CEPでは、地域の問題や課題を発見し、解決に向けた調査を行い、発表することが目的です。
グローバル観光学科では、グアム、ベトナム、オーストラリア、兵庫・城崎温泉、福井・越前町など、海外4ヵ国、国内5地域から調査地域を選び、リサーチを行います。
私たちのチームは当初、イスラム教徒「ムスリム」とツーリズムについてリサーチする予定でした。しかし、文化遺産の管理・経営について考える授業「Heritage tourism management」で、2008年に世界遺産に登録された、ペナン島の中心都市・ジョージタウンの歴史的価値が低下していることを初めて知り、プロジェクトの変更を決定。その原因と対策についてリサーチをはじめました。
ジョージタウンには、イギリス植民地時代のコロニアル様式の建築物や、店舗兼住居「ショップハウス」といった多民族社会の面影が色濃く残っています。これは1966年、生活の安定を目的に家賃の上昇を制限した法令「家賃統制令」の影響です。不動産価値が上がらないため、修復や改修などできないまま老朽化した建物が、植民地時代の雰囲気を現代に伝えてきました。
しかし、2000年に「家賃統制令」が撤廃。また世界遺産に登録された結果、不動産価値が上がり、家賃が高騰します。このため代々住んでいた中華系・インド系マレーシア人など、店を営み住居していた人たちの多くが郊外へ転居。空いた建物には、観光客向けの店舗が進出し、当時の雰囲気が失われつつあるそうです。
また「アートの街」としてペナンを売り出そうと考えた政府は、2012年に「ジョージタウン・フェスティバル2012」を開催。リトアニア出身のアーティストを招き、ショップハウスの壁を利用した「ウォールアート」(壁画)を制作し、観光スポットとして話題となりました。以降、「ワイヤーアート」(針金で絵などを形どった美術作品)などの作品が増加。その影響で植民地時代の面影が減り、普遍的価値の低下が危ぶまれています。
この事態は、23件の世界遺産が登録されている日本でも起こりうることだと思います。観光立国を目指し整備を進める現在、防がなければならない問題だと考えた私たちは、地元民の郊外流出と世界遺産の観光地化、それに伴う価値低下が進むジョージタウンの現状を、調査することに決めました。
また、3年次から始まるゼミに向けて、ムスリムのみなさんへのアンケートやヒアリングも同時に行い、今後、外国人観光客と宗教をテーマにした調査へつなげていこうと思います。
CEPマレーシア組は、授業がびっしりと詰まっているので、調査する時間は限られています。自分たちで時間を見つけて進めなければなりません。
満足のいく発表になるかどうか、不安もありますが、12月13日の最終発表に向けて、頑張って取り組みたいと思います!