Terima kasih, Pulau Pinang!(ありがとう、ペナン!)
みなさんこんにちは。遠藤櫻です。
前回に引き続き、プロジェクトの調査と最終報告会、そしてCEPの総括について書きたいと思います。
私たちのチームは「Importance of World Heritage focused on George Town」と題し、世界遺産に登録されたペナン島の中心部・ジョージタウンの普遍的価値の低下について、調査を行いました。
今回の調査では、2つの問題に焦点を当てました。ひとつは世界遺産に新たな付加価値、つまり多国籍文化を象徴する、店舗兼住居「ショップハウス」にウォールアート(壁画)を施したこと。もうひとつは、世界遺産を商業利益のために利用し、急激な観光地化が進んでいることです。
問題の現状を把握すべく、実際にジョージタウンに足を運び、聞き取り調査行いました。しかし、家賃高騰のため、 古くから住む住民は他地域に転居。その影響で話を聞くことができませんでした。
そこで、国立マレーシア科学大学(USM)の学生と日本人を対象に、インターネットを利用したアンケートを実施しました。方式は「賛成・反対」の択一選択で、内容・結果は以下のとおりです。
【アンケート】マレーシアの世界遺産(ジョージ・タウン)の持続可能な観光のためには、何が大切か
★調査日:2019年11月28日(木)~12月4日(水)
★回答数:日本人54人、マレーシア人(USMの学生)36人
■質問1 世界遺産に登録されている建物に、ウォールアートを描くことは賛成? それとも反対?
●日本人
▼賛成・20.4%
理由
「ウォールアートを含めて、世界遺産として登録されているから」「きれいでおしゃれだから」
▼反対・79.6%
理由
「現代美術と歴史的建造物は、それぞれ良さがあるけど、一緒にするとその魅力が失われてしまう」
「ウォールアートは、街の歴史的価値を下げてしまうのでは」
●マレーシア人
▼賛成・74.3%
理由
「観光客誘致につながる」「芸術的価値があるから」「街の評判を高めると思う」
▼反対・25.7%
理由
「世界遺産が台無しになると思う」「未来に向けて、そのまま保存しておくのが一番」
■質問2 文化的・歴史的な街が、金銭的な利益を求めて観光地化していくことに賛成? それとも反対?
●日本人
▼賛成・83.3%
理由
「街の保護につながるなら、いいと思う」「観光資源の有効活用は大切だ」
▼反対・16.7%
理由
「住民たちの退去は、持続可能な観光につながらない」「利益ではなく、街の魅力が重要」
●マレーシア人
▼賛成・57.1%
理由
「世界遺産の補修管理には多くのお金がかかるので、観光収入は必要だと思う」
▼反対・42.9%
理由
「ノスタルジックな街並みは、お金以上の価値がある」「老朽化のため、壊れやすいから」
「当時の象徴として、後世に残したい」
質問1では、日本人の約80%が反対しているのに対し、マレーシア人の74%が賛成でした。また質問2では、日本人の83%が賛成し、マレーシア人は賛成が57%と、半数よりやや多い回答でした。
日本人は観光地化には好意的ですが、ウォールアートには否定派が多く、マレーシア人はウォールアートは賛成で、観光地化にはやや肯定的という結果でした。 以上から、マレーシア人は世界遺産に新たな付加価値をつけることに抵抗がないこと、そして補修管理の金銭的負担が大きく、観光地化は仕方がないと感じていることが分かりました。
そこで私たちはジョージタウンの価値低下の解決策として、SDGs(持続可能な開発目標)の目標11-4「世界の文化遺産および自然遺産の保護・保全の努力を強化する」をヒントに、以下を提案することにしました。
1,世界遺産保護のガイドラインを強化し、ウォールアートを特定の地域のみに限定する
2,規制の低い商業地区を設け、利益の一部を保護・保全に充てる
1は、ジョージタウンのウォールアートは特定の地区のみに限定し、歴史的建造物(特にショップハウス)には禁止すること。2も同様に、ショップタウンに広がる観光客向けの店を1ヵ所に集めて「商業地区」とし、地区以外の出店に規制をかけることです。
さて、あとはプレゼンテーションの準備です。パワーポイントを駆使して、調査内容を整理し要点のまとめを行いました。京都外大の授業でオールイングリッシュの資料を作る機会は多々ありますが、複雑な問題を原稿にまとめ、スライドにするのはとても苦労しました。
12月13日。いよいよUSMでの最終発表会です。
今まで授業をしてくれていた先生やバディが会場に集まり、私たちの調査発表に聞き入ります。先生方からは、「データをきちんと取って、発表も論理的。よくできてました」と高評価でした。
授業の合間を縫って調査し、苦労して作成したプレゼンテーション。良い評価で本当にうれしかったです。
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「絶対、泣かへんわ」
そう思ってた、12月14日、帰国当日。ペナン国際空港の保安検査場。
そこには大きな荷物と、涙が止まらなくなっている私がいました。
約5週間あったCEPもとうとう終わり。
「食事や寝る前のおしゃべりとか、週4回は行っていた食堂「PELITA」のロティが食べられなくなるなあ」
帰国前夜、部屋でしんみりと思い出話をした私たち。中には、泣いてしまう子も。
"ああ、泣いてるなぁ…私は絶対、泣かへんけど"
そんなことを思いながら、ひと晩中、ペナンでの日々を振り返っていました。
今回、CEPマレーシアのリーダーを務めながら日々の授業をこなし、その合間にプロジェクトのリサーチ。そしてグローバル観光学科の広報隊員として、ほぼ毎日インスタグラムに写真を投稿しつつ、この「CEP Letter」執筆も担当。特に28人のメンバーをまとめるのはとても大変で、トラブルも多発しました…。
こんなにたくさん悩んだのは、初めての経験です。
CEPマレーシア組が次々と荷物検査を受ける中、私は最後までUSMでお世話になったバディたちと、最後の挨拶をしていました。すると、仲良しのルームメイトが、泣きそうなくしゃくしゃの表情で近寄り、私をハグ。
「ああ、終わったんやなぁ」
彼女の体温を感じながらそう思うと、滝のように涙があふれてきました。拭いても拭いても、全然止まりません。ふと彼女を見ると、ケロッとした笑顔。
あれ、もしかして、私を泣かせるためのウソ泣き…?
やられました。
私は泣き笑いの表情で、再会を約束し、飛行機へ。
約1ヵ月間の滞在が終ってホッとしたのか、もしくは泣き疲れたのか、大阪・関西国際空港まで泥のように眠りました。
CEPは、英語のコミュニケーション能力やリーダーシップなど、自己成長ができる素晴らしい機会でした。また、2回目のペナン滞在でしたが、人柄が温かく、ご飯もおいしい、素敵な場所だと改めて思いました。来年行く後輩たちには、マレーシアをお勧めしたいですね。みなさんも、ぜひ行ってみてください。
今まで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
そして、明るく積極的なメンバーたちに救われました。本当にありがとう!
ここが私のアナザースカイ、ペナン!